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お悩み相談

介護施設の看護師が辞めたいと感じる理由と、経験を活かす転職先の選び方

看護師転職の羅針盤 編集部2026年6月30日 更新11分で読めます
目次

介護施設の看護師が辞めたいと感じる主な原因は、医師不在時の判断責任・介護職との役割分担の摩擦・看護師1〜2人体制の孤立感・看護スキル低下の不安の4つです。介護施設看護師の離職率は15.3%(介護労働安定センター 2023年度調査)で、病院看護師の11.8%(日本看護協会 2022年)を3.5ポイント上回っています。

介護施設の看護師が辞めたいと感じるのは珍しくない

「夜中に入居者さんの急変コールが来ても、施設には医師がいない。電話一本で判断を求められる」

「介護スタッフから『これ医療行為ですよね?看護師さんがやってください』と言われるたびに、境界線が分からなくなる」

「看護師は自分1人。相談できる同職種がいない」

こうした声は、介護施設で働く看護師からよく聞かれます。辛いのはあなただけではありません。介護施設の看護師には、病院では起こりにくい固有のストレス要因が重なっています。

介護施設看護師の離職率(病院の11.8%を3.5pt上回る)15.3%

介護労働安定センター(2023年)

また、「介護の仕事の悩み・不満」として「職場の人間関係(職員同士)に問題がある」を挙げた割合は37.0%にのぼります(介護労働安定センター 2023年度調査)。介護施設では看護師と介護スタッフの関係が離職の大きな要因となっていることが分かります。

介護施設の看護師が辞めたくなる4つの原因

医師不在時の判断責任の重さ

特別養護老人ホーム(特養)の配置医師のうち、97%が非常勤です(厚生労働省 介護給付費等実態調査)。これは、日常的に常勤医が施設にいないことを意味します。

夜間や休日には、看護師が施設内で最も医療知識のある職種として判断を求められます。

  • 「救急搬送すべきか、経過観察でよいか」
  • 「主治医に連絡する緊急性があるか」
  • 「入居者の状態変化が通常の範囲か」

こうした判断を1人で下す場面が、毎日のように発生します。日本看護協会の調査では退職理由として「責任の重さ・医療事故の不安」が14.2%を占めていますが、常勤医がいない施設ではこの負担がさらに増幅されます。

介護職との役割分担の摩擦

医療行為と介護行為の境界線は、厚生労働省の「医師法等の解釈に関する通知」(2022年改定)でも整理されています。しかし現場では、この境界が曖昧になりがちです。

「爪切りは医療行為か介護行為か」「褥瘡の処置はどこまで介護スタッフに任せられるか」といった判断が日々発生し、「看護師さんがやってください」と頼まれる業務が増えていきます。

医療優先の判断を下す看護師と、入居者の生活の質を重視する介護スタッフとの間で、価値観の違いが摩擦を生むこともあります。日本医療労働組合連合会の調査では退職理由の1位が「人間関係」(26.5%)ですが、施設では介護職との関係がこの数字を押し上げています。

看護師1〜2人体制の孤立感

特別養護老人ホームの看護師配置基準は、入居者50人までの施設で「1人以上」です。つまり、法的には看護師1人で施設を運営できる最低基準が認められています。

相談できる同職種がいない環境では、すべての判断を1人で背負うことになります。疑問や不安を気軽に話せる看護師の先輩・同僚がいないことは、精神的な孤立感につながります。

看護スキル低下への不安

介護施設では、急性期病院と比べると、静脈注射や高度な医療処置の機会が限られます。「このまま施設にいたら、病院に戻れなくなるのではないか」という不安を抱える看護師は少なくありません。

日本看護協会の調査では「スキルアップの限界を感じた」ことを退職理由に挙げた割合は8.6%ですが、施設看護師にとってはより切実に実感されやすい項目です。

介護施設では「人間関係」が介護職との摩擦で、「責任の重さ」が医師不在の判断責任で、それぞれ形を変えて現れます。

辞めるべきか迷ったときのセルフチェック

このチェックリストは、自分の優先順位や現状を整理するためのツールです。医学的な診断ではありません。精神的な不調(不眠・食欲不振・気力の低下など)が続く場合は、医療機関への相談も選択肢の一つとして考えてみてください。

辞めたいと感じたときの3つの対処法

1. 辛さの主因を特定する

まず、何が一番きついのかを書き出してみましょう。

  • 判断責任が重い → 複数の看護師が配置された施設や、医師が常勤に近い体制の老人保健施設(老健)への移動を検討
  • 介護職との関係に消耗している → 医療・介護の役割整理が進んでいる大規模施設や、看護部門が確立されている施設を探す
  • 孤立感がつらい → 看護師複数配置の施設や、同職種の仲間がいる環境に変える
  • スキルが不安 → 病院や訪問看護への転職を視野に入れる

原因が特定できると、「環境を変えれば解決するか」「職場の種類を変える必要があるか」の判断がしやすくなります。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:「判断責任が重い」を「経験不足」と混同して自責してしまう

「急変時に自分1人で判断しなければならない恐怖を感じるのは、まだ経験が足りないからだ」と自己批判して、転職という選択肢を先送りにするケースがあります。しかし特養の97%が非常勤医師体制であるという事実は、個人の経験値で解決できる問題ではありません。夜間に医師不在の施設で最終判断を1人で下す構造は、ベテラン看護師でも精神的負荷が高いと感じる環境です。「自分が弱い」と思う前に、「この構造自体が自分に合っているか」を問い直してみてください。判断責任を分散できる環境(常勤医がいる老健・看護師複数配置の大規模施設・急性期病院)への転職は、弱さからの逃げではなく、キャリアの合理的な選択です。

2. 施設の規模・種類を変える

介護施設でのキャリアを続けながら、働きやすい環境に移ることも有効です。

看護師が複数配置されている大規模施設や、医師の関与が多い老人保健施設(老健)介護医療院では、孤立感や判断責任の重さが軽減されます。

介護施設で働く看護師の需要は今後も増加が見込まれています。厚生労働省の推計(2016年比)によると、2025年には介護分野で19.5〜21万人の看護師が必要とされており、1.3〜1.4倍の増加が予測されています。施設看護師としての経験は、今後も確実に評価される時代が続きます。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:老健に移れば夜間の判断責任が減ると思っていたが変わらなかった

「老健は医師が常勤に近い体制だから、夜間の判断責任が軽くなるはず」と期待して特養から老健に移籍したものの、夜間帯は結局看護師1人の当直体制で、急変時の一次判断は変わらず自分が担うことになった——というケースがあります。老健には常勤医師の配置義務がありますが、夜間・休日は当直医が対応する体制が多く、看護師が医師に連絡する前に状態のトリアージを行う役割は特養と大きく変わらないことがあります。移籍前に確認すべきは「常勤医師が日中いるか」だけでなく、「夜間・休日は何人体制か」「夜間に医師へ連絡する際の判断基準が施設として整備されているか」「急変時のプロトコルが文書化されているか」の3点です。これらが整備されている施設では、1人判断の不安が大きく軽減されます。

3. 病院・他の職場への転職を検討する

「施設を離れて病院に戻りたい」という気持ちがあるなら、転職は現実的な選択肢です。

特養の看護師の平均年収は507万円(厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査」令和6年度)です。病院看護師の平均年収508.1万円(賃金構造基本統計調査 2023年)とほぼ同等で、「給与を維持しながら医療チームの中で働ける環境」を選ぶことができます。

施設での経験は、病院でも評価されます。全身管理の視点・多職種連携・看取りケアの経験は、急性期病棟や在宅医療の現場でも求められるスキルです。

転職の流れを詳しく確認したい方は、看護師の転職活動の流れと手順も参考にしてみてください。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:介護施設での経験を「医療スキルがない期間」と捉えて面接でアピールできない

「施設にいたので急性期の経験がなく、病院の面接で何を話せばいいか分からない」という声はよく聞きます。しかし、介護施設での経験には病院にはない強みが複数あります。医師がいない状況で状態変化を早期に察知しトリアージするアセスメント力、介護スタッフ・ケアマネ・家族・かかりつけ医を巻き込んだ多職種連携力、そして看取りケアの実践経験は、地域包括ケア病棟・回復期リハビリ病棟・訪問診療クリニックで特に評価されます。「施設にいたからスキルが落ちた」と自己評価を下げるのではなく、「施設でしか積めない経験をしてきた」という視点で面接を準備することが重要です。転職エージェントに「施設経験を病院向けにどう言語化するか」を相談すると、具体的なアピール文を一緒に整理してもらえます。

介護施設の経験、次のステップでも活かせます

入居者さんの全身管理・多職種連携・看取りケアのスキルは、病院でも在宅でも評価されます。まずは選択肢を見てみませんか。

よくある質問

Q. 介護施設の看護師から病棟に戻ることはできますか?

A. 可能です。施設での全身管理・バイタル観察・多職種連携・看取りケアの経験は、病院でも評価されます。「ブランクがある」という感覚を持つ方もいますが、急性期病棟や回復期病棟への転職を実現している看護師は多くいます。転職エージェントに施設経験のアピール方法を相談するとスムーズです。

Q. 施設看護師の需要は今後も増えますか?

A. 需要は増加が続く見込みです。厚生労働省の推計では、2025年に介護分野で19.5〜21万人の看護師が必要とされており(2016年比1.3〜1.4倍)、高齢化の進展に伴い施設看護師の需要は今後も高水準で推移する見通しです。施設での経験を積んでおくことは、長いキャリアの観点でも意味があります。

Q. 介護施設の看護師の給与は病院より低いですか?

A. 実はほぼ同等です。特養の看護師の平均年収は507万円(厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査」令和6年度)で、病院看護師の508.1万円(賃金構造基本統計調査 2023年)とほぼ変わりません。「施設は給料が安い」というイメージは、必ずしも正確ではないことが公的データから分かります。

失敗例・よくあるNG:介護施設からの転職でやりがちなミス

介護施設の看護師が転職・移籍を検討する際に多い、実際のつまずきパターンを3つ紹介します。

NG1:介護職との摩擦を「自分のコミュニケーション不足」と思い込んで施設に留まり続けた

「介護スタッフとうまくやれないのは自分の伝え方が悪いからだ」と自責し、コミュニケーションの改善に努めながら2〜3年が経過したものの、医療行為の境界に関する摩擦は本質的に解消されなかった——というパターンがあります。医療行為と介護行為の境界の曖昧さは、個人のコミュニケーション力で解決できる問題には限界があります。施設として「医療・介護の役割分担ルール」が文書化・周知されているかどうかが、摩擦の発生しやすさを左右します。移籍先を探す際は「医療と介護の役割分担についてどのようなルールを設けていますか」と面接で確認することで、整備されている施設かどうかを見分けられます。

NG2:看護師1人体制の施設から「看護師2人以上」の施設に移ったが、実態は非常勤で孤立感が変わらなかった

「常勤看護師2名配置」と求人票に書かれていたため孤立感が解消されると期待したものの、もう1人は週2〜3日の非常勤で、日常的に相談できる同職種はほぼいなかった——という例があります。「看護師配置数」の確認だけでは不十分で、「常勤・非常勤の内訳」「シフトが重なる日数」「急変時に連絡できる看護師が日中何人いるか」を確認する必要があります。孤立感の解消を目的に移籍する場合は、「日中は常に看護師が2人以上シフトに入っていますか」と具体的に確認しましょう。

NG3:「施設看護は病院に戻れなくなる」という周囲の声を信じて早期に転職を急いだ

「施設にいると病院に戻れなくなる」という先輩の言葉を聞いて焦り、施設での経験が浅いまま病棟へ転職したものの、アセスメント力・多職種連携の経験が十分に積めていない状態で急性期病棟に入り、かえって苦労した——というケースがあります。施設での経験年数が長くなるほど病棟復帰のハードルが上がるという面はありますが、1〜2年で「もう戻れない」ということはありません。焦って転職するより、「自分が施設でどんな経験を積みたいか」を整理してから動く方が、転職後の満足度が高くなります。転職のタイミングは周囲の声ではなく、自分のキャリア目標を基準に判断しましょう。


まとめ:今の辛さは、環境で変えられることが多い

介護施設の看護師が辞めたいと感じる主な原因は次の4つです。

  • 医師不在時の判断責任の重さ(特養の97%が非常勤医)
  • 介護職との役割分担の摩擦(医療・介護の境界の曖昧さ)
  • 看護師1〜2人体制の孤立感(配置基準が「1人以上」のため)
  • 看護スキル低下への不安(医療処置の機会が病院に比べ限定的)

施設看護師の離職率(15.3%)が病院(11.8%)より高いのは、これらの要因が重なるためです。ただし、多くのケースは「施設看護師が向いていない」のではなく、「今の施設・体制が合っていない」ことが原因です。

次のステップとして、以下を参考にしてみてください。

一人で抱え込まず、まずは選択肢を確認しましょう

施設看護師として培ってきた経験は、あなたが思う以上に評価されます。転職先の選び方を、プロに相談してみませんか。

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